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夢の魔法

夢の魔法

その魔法使いは言った。
「お前の一番会いたいと思う相手を念じろ。会わせてやる」
僕はもちろん、君の姿を頭に思い浮かべ、念じる。
「会いたいな、会いたいな……」
そこで目が覚めた。
「おはよ」
君がいた。

著:リチャード三太郎

夢か現実か魔法か平凡か

夢の中で念じた願いが叶ったのか、それともただのいつも通りの日常が流れているだけなのか。

非日常的な「魔法使い」と日常的な「おはよ」という2つの言葉が様々な想像を膨らませてくれる作品でした。

同じ魔法使いに出逢ったとして、あなたは一体誰を念じますか?

すれ違い

すれ違い

春に桜の下で想いをこっそり確かめ合った。
夏に祭りの喧騒の中でぎゅっと手を繋いだ。
秋に紅葉を見る君の頬に優しくキスをした。
冬に赤と緑が溢れる街で静かにすれ違った。

――冬は2019年、その他は2020年。

著:白桃吉

絶対に読み返す

またしても白桃先生にやられました。まさかのスターウォーズ進行でした。これは絶対に読み返してしまいますね。

本作の面白いところは、最後の一行があるかないかで表情をガラリと変えてしまうところでしょう。言わずもがな。

100文字物語の可能性が広がる素敵な作品でした。

追いかける!

追いかける!

――じゃあな。
そう言って背中を向けた貴方の、一瞬見せたその顔、その表情。
何?
頭をよぎる、考えたくない可能性。目を伏せたままでいた、ある事情。
今?
光り輝く舞台を放り出し、私は、貴方を追って駆け出した。

著:リチャード三太郎

後悔先に立たず

ずっと目をそらしていた「事情」をそのままにしておけば、何らかの形で後悔することになる可能性が高いです。思い立ったらすぐ行動!それがどんな結果であろうと・・・。

想像膨らむ素敵な100文字物語をありがとうございます。

優柔不断のオノマトペ

優柔不断のオノマトペ

詰まって「あぁ」
腕組んで「いぃ」
困って「うぅ」
繋ぎに「えぇ」
誤魔化して「おぉ」
明瞭返答求めてみれば、優柔不断の音がする。
「あぁいぃうぅえぇおぉ以外に何か言えねえのか?他の言葉を返してみろよ。」
「ぐう」

著:Fa1

気をつけよう

迷うことも大切ですが、決断するときはキッチリハッキリと。

自戒。

心の鍵

心の鍵

君が、何を考えてるのか。
君は僕を、どう思っているのか。
知りたい。
見たい。
君の心の鍵を、僕に下さい。
君は、僕の顔を覗き込む。
その目が、
「とっくに渡してるよ?」
と微笑んだ。

著:リチャード三太郎

直接覗くことはできないが

相手の心が読めなくて悶々としている彼と、いとも簡単に彼の気持ちを察してみせた彼女。
対象的な二人の描写が素敵な作品です。私は恋愛経験が数少ないということもあり、本作のように甘く優しい作品には惹かれてしまいます。

恋せよ少年少女!

降霊術の末に

降霊術の末に

こっくりさんなんて信じていない。
だから私は自分で指を動かして、一人で会話を楽しんでいた。
「こ・ろ・し・て・い・い・よ」
次の瞬間、私の首がギリギリとしまっていく。
周囲に人はいない。私はそのまま息絶えた。

著:相枝静花

軽い気持ちで呼ばないで

いくら都市伝説とはいえ、おふざけでやるべきではないですね・・・。

気になるのは「ころしていいよ」の文字は、本当に本人が本人の意志でなぞったのか。私は、最初から最後までこっくりさんの思いのままにやられていたような気がしてならないです。

こわ。

見えない君

見えない君

外を歩けば、少し後ろを同じスピードでついてくる足音が聞こえる。
家の中にいる時は、私の部屋の中を歩き回る足音が聞こえる。
これは、いつから始まったのだったかな。
君は、ずっと私の近くにいるね。
ねぇ、君は誰?

著:相枝静花

ほっこりおばけ

特に悪さをするでもなく、自分の周りをうろちょろしているだけならお化けも可愛く感じます。身内で亡くなった方が側にいるのか、それともなんとなくくっついてきているだけの他人なのか。

私はほっこりホラーな感じがしてしまっているのですが、実際に現実に起こると怖いかも知れませんね・・・。みなさんはどう読みましたか?

悪霊除けの数珠

悪霊除けの数珠

「悪霊には気を付けて」
と、悪霊避けの数珠をくれた祖母が危篤になった。
一時間後、亡くなった祖母の遺体の前で、呼びかけてみると……。
背後から私の名前を呼ぶ祖母の声と気配がして、
悪霊避けの数珠が弾け飛んだ。

著:相枝静花

本心

かなり好きなタイプのホラーでした。祖母は自分が悪霊になることをわかっていたのか、それとも意図せず悪霊になってしまったのか。また、自分が悪霊になってしまうとわかっていたなら何故わかっていたのか、意図せず悪霊になってしまったのなら何故数珠を渡したのか。その答えは祖母の「本心」にあるような気がします。

根っからのミステリ好きな私は、本作のような考えさせられる100文字物語は大好物です。

テスト期間

テスト期間

なんにも手につかない、こんな時は。
思い出そう、君のことを。
可愛い君とのあれこれを。
そして、やる気をもらうんだ。
…………ああ、だめだ。
幸せすぎて、手につかない。

著:リチャード三太郎

もっと幸せになりやがれ

やる気をもらうはずが、惚気に突入してしまうとは・・・。こっちまで幸せになってしまうじゃないか!

集中力が続かない原因が「可愛い君」であれば、なんか許せちゃいますね。付き合いたての甘々な感じが良く伝わってきて素敵です。

一生幸せでいてくれ。

届いてしまった祈り

届いてしまった祈り

墓石の前で、いつまでも泣いていた。
会いたいよ。ずっと側にいて欲しいよ。
心の中で呟くと、背後に人の気配がした。
振り向いてみたけど、誰もいない。
その時、耳元で囁かれた。
「分かった。お前に憑くことにしたよ」

著:相枝静花

取り憑いたのは「会いたい人」?

その祈りは「会いたい人」に届いたのか、それとも思わぬ人物に届いてしまったのか。仮に「会いたい人」に届いていたとしても、「お前に憑くことにした」とはなんだか不穏な回答ですね。

さまざまな受け取り方ができますが、そのどれをとってもしっくりとくる面白さがあります。みなさんは本作をどう読みましたか?