100文字物語

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夢の魔法

夢の魔法 その魔法使いは言った。 「お前の一番会いたいと思う相手を念じろ。会わせてやる」 僕はもちろん、君の姿を頭に思い浮かべ、念じる。 「会いたいな、会いたいな……」 そこで目が覚めた。 「おはよ」 君がいた。 著:リ...
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すれ違い

すれ違い 春に桜の下で想いをこっそり確かめ合った。 夏に祭りの喧騒の中でぎゅっと手を繋いだ。 秋に紅葉を見る君の頬に優しくキスをした。 冬に赤と緑が溢れる街で静かにすれ違った。 ――冬は2019年、その他は2020年。 ...
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追いかける!

追いかける! ――じゃあな。 そう言って背中を向けた貴方の、一瞬見せたその顔、その表情。 何? 頭をよぎる、考えたくない可能性。目を伏せたままでいた、ある事情。 今? 光り輝く舞台を放り出し、私は、貴方を追って駆け出した。 ...
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優柔不断のオノマトペ

優柔不断のオノマトペ 詰まって「あぁ」 腕組んで「いぃ」 困って「うぅ」 繋ぎに「えぇ」 誤魔化して「おぉ」 明瞭返答求めてみれば、優柔不断の音がする。 「あぁいぃうぅえぇおぉ以外に何か言えねえのか?他の言葉を返してみろよ。」...
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心の鍵

心の鍵 君が、何を考えてるのか。 君は僕を、どう思っているのか。 知りたい。 見たい。 君の心の鍵を、僕に下さい。 君は、僕の顔を覗き込む。 その目が、 「とっくに渡してるよ?」 と微笑んだ。 著:リチャード三太郎 ...
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降霊術の末に

降霊術の末に こっくりさんなんて信じていない。 だから私は自分で指を動かして、一人で会話を楽しんでいた。 「こ・ろ・し・て・い・い・よ」 次の瞬間、私の首がギリギリとしまっていく。 周囲に人はいない。私はそのまま息絶えた。 ...
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見えない君

見えない君 外を歩けば、少し後ろを同じスピードでついてくる足音が聞こえる。 家の中にいる時は、私の部屋の中を歩き回る足音が聞こえる。 これは、いつから始まったのだったかな。 君は、ずっと私の近くにいるね。 ねぇ、君は誰? 著...
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悪霊除けの数珠

悪霊除けの数珠 「悪霊には気を付けて」 と、悪霊避けの数珠をくれた祖母が危篤になった。 一時間後、亡くなった祖母の遺体の前で、呼びかけてみると……。 背後から私の名前を呼ぶ祖母の声と気配がして、 悪霊避けの数珠が弾け飛んだ。 ...
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テスト期間

テスト期間 なんにも手につかない、こんな時は。 思い出そう、君のことを。 可愛い君とのあれこれを。 そして、やる気をもらうんだ。 …………ああ、だめだ。 幸せすぎて、手につかない。 著:リチャード三太郎 もっと幸...
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届いてしまった祈り

届いてしまった祈り 墓石の前で、いつまでも泣いていた。 会いたいよ。ずっと側にいて欲しいよ。 心の中で呟くと、背後に人の気配がした。 振り向いてみたけど、誰もいない。 その時、耳元で囁かれた。 「分かった。お前に憑くことにしたよ...
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